客室数が100室以下の小規模で超高品質なホテルをレジデンシャルホテルと呼ぶが、ホテル西洋銀座(中央区銀座)は我が国では数少ないレジデンシャルホテルの一つだ。
総支配人のロイド・S・中野氏はハワイ生まれの日系三世。彼はハワイ大学に在学中の1974年、祖父の故郷である日本を初めて訪れた時、銀座伊東屋で見た1本の万年筆に一目惚れする。学生の身には少し贅沢だったが、思い切って手に入れた。だが、すぐには使われず、机の中で大切に保管される。年月を経て、彼がエグゼクティブの地位に就いてから毎日使われることになった。
五つ星ホテルに逗留すると、客室には必ず総支配人または担当支配人直筆のウェルカムカードが用意される。よく用いられる表現は「ウェルカム バック(お帰りなさいませ)」だ。大型ホテルの場合、ウェルカムカードは印刷やタイプのことも多いが、中野氏は、顧客の顔を思い浮かべながら一枚一枚万年筆でしたためるのを日課としている。左利きの中野氏の書きグセにペン先が馴染んだ頃から、もう手放せなくなったという。
日本人は舶来品を有り難がる傾向がある。だが、中野氏にとってこの万年筆は、祖国と自らを結ぶ絆であり、ホテルマンとしての誇りを支え続けた大事な道具なのである。
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出典:「日経Masters」 2002年7月号 p.127
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| デザイン:Aleph Zero co.,ltd. |
| 写真:尾関裕士 |
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