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| 週刊 ホテルレストラン2002年6月14日号 p.72 |
〈最終回〉
サービス産業・・・・・・これからの経営 |
| ブレインゲイト(株) CEO 酒井 光雄 |
社会のサービス産業化が進むと、土曜や日曜日、深夜、夏休み、そして年末年始に働く人が増えてくる。世間の多数派が休暇や時間を取り、消費するから、そうした時期こそ売上げが見込める。
だが、サービス産業に働く恋人のいる若者達や学校に通う子供を持つ親にとって、クリスマスイブをはじめとする年に何回かの記念日は大切な人々と時間を共有したい気持ちに変わりはない。男たちだけで飲み明かす時代は終わり、恋人や家族と時間を共有化することが日常化したいま、われわれ顧客がサービスを受けられるのは、そこに働くスタッフたちのプライベートライフの犠牲の上に成立していることを忘れてはなるまい。
自分たちが楽しみたい記念日に、人をもてなすために働いている人達が休暇を取る時には、本人はもとより恋人や家族にとっても価値ある時間になるべきだ。
だれにでもできそうに見えて、実はごく一部の有能な人材にしかできないサービス産業。有能な人材を本当に獲得したいと考えるのなら、サービス産業の経営者は自社の社員の休日や休暇の取得にどこよりも前向きな施策を取るべきだ。自らも顧客の一人となって、豊かなオフタイムの経験を持っていれば、訪れる顧客に心の底から笑顔で対応できるからである。
収益構造を見直す
日本の人件費は世界一高いといわれる。
合理性と効率性を追求する企業は、人を使わなくても済むビジネスを考える。
その一方で、どうしても人がそこにいなくては成立しないビジネスを考える企業は、高額な人件費を支払っても、なお収益が出る方法を生み出す。
突き詰めれば、これからのビジネスはこのどちらかを選択することになる。
どこでも入手でき、だれにもできる仕事を人にさせている企業は、収益はそのうち上がらなくなる。こうした企業では販売管理費を極限まで切り詰め、省力化させる以外ない。しかし、これとて競合が価格競争を仕掛けてくれば、自社の優位性はなくなってしまう。
その一方、自社にしか入手できない価値を作り、自社の社員にしかできない仕事をつくり出す企業は、自社で収益の幅を決めることができる。システム化によって人に任せるよりも正確で省力化できる所は省力化しても、顧客との接点では絶対に人を起用する。それが他社との競争優位性を高め、自社の価値だと考えるからだ。
どこでも入手できるものでなく、自社の独自商品として、宿泊・料飲・宴会・ブライダル・ビジネスミーティングを売れるのか。そう考えると、多くのホテルや旅館、レストランなどは該当しない。消去法的にたまたま残ったから、選ばれているに過ぎない。これほど不安定で不確定な収益構造をいつまでも続けてはいられないと思う。
市場の特定は顧客の特定から始まる
収益構造を安定させ、価格でなく価値を売り物にするには、自らの市場を特定する必要がある。市場を特定するには、まず企業として顧客層を特定することから始める。
日本のサービス産業の個性が乏しいのは、企業として顧客を決めずに、場当たり的に販促という戦術を繰り返すからである。
企業として最も重視すべき顧客層をどこに設定するのか。全てはここから始まる。(図ー1参照)
顧客を決める際、性と年齢という区分に縛られず、多様な分類があることに気付いてほしい。
また、特定した顧客層を中心層に置くことで、自社の企業ブランドが向上し、その結果、そうした人々に自分も思われたい、あるいはそうした人々にあこがれる層がサブターゲットとして生まれてくる。外資系の新御三家ホテルやブランド力を持つ企業は全てこの視点で、市場を創造しているといって良い。
顧客が決まると、経営戦略が決まる
顧客が決まると、戦う土俵が定まるので、経営戦略も明確化する。例えばビジネスのキーマン(意思決定者)である40代を中心としたCEOやビジネスエグゼクティブをコア層に設定すれば、彼らが好むサービスからインテリア、浴室のタイプまで見えてくる。またこうしたテイストは20代後半から30代全般の仕事を持ち、海外経験も豊富な女性たちにも支持され、市場は拡がる。
顧客の求めるグレードとテイストが定まれば、そこから価値に見合った価格設定とコスト計算が始まる。
例えば、富裕層のCEOやエグゼクティブを対象にしたレストランメニューを考える時、多くのホテルやレストランは腕を競って凝った料理を出す。だが、こうした人々はただでさえ外食が多く、自ら食べたいものは素材の持ち味を活かしたり、体に優しいメニューを求めている。毎日外食続きで内臓がフォアグラ状態なのに、フォアグラなど食べたくはないだろう。国際線の機内食も同様で、飛行機で本当においしい食事を食べたいと思う人はファーストクラスには乗らない。食習慣も食に期待するものも、一般人とは大きな違いがあるからである。
こうした企業と顧客の考える価値のミスマッチは、限りなく多い。凝ったレシピや素材でないと高い料金設定ができないと考えるのは、本当に顧客が望むコトを知らない人々だ。
顧客の姿が明確になれば、自社の戦略も明らかになる。他社が競う土俵でなく、自社でのみ創造できる市場が見えてくる。そこに自社の資源を集中化するから、強みが発揮される。
凝った料理を食べる場所は、もはやホテル以外にも山程存在する。どんな顧客にも同じ対応とサービスを行う外食店もあふれ返っている。
だが、顧客に“自分のためにここまで気配りしてくれる”と思わせるホテルやレストランは、数えるほどしか存在しない。
顧客を決めることは、経営を決め、商品やサービス、ハードウェアまで決定づける。これが独自の企業スタイルとなって、想定した顧客層を魅了し、ファンを拡大していく。そしてその結果として、企業にブランドという力が生まれる。
大ヒットを飛ばす曲は、万人を対象に作られることははい。たった一人の想定した相手の気持ちを考え抜く。そしてその曲が生まれた時、結果として多くの人々を魅了する。サービス産業もこれと同じセオリーが成立する。 |
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