マーケティング ホライズン 2010年8月号
マーケティングスキルを向上させる仕事術
ブレインゲイト(株) マネジャー 武田雅之

 

 社団法人日本マーケティング協会から毎月発行されている『マーケティングホライズン8月号』に
弊社マネジャー武田雅之のコラムが掲載されました。

 「今日着ている服の意味は?」、打ち合わせに訪れた取引先での出来事である。この問いに即答できた方は、優れたマーケティングセンスの持ち主だ。実際、私はこの場面に遭遇して冷や汗を流した過去がある。身近なものに対する強い関心が、洗練されたマーケティングセンスにつながることを前述の取引先はこの問いを通して伝えたかったのだ(優れたマーケッターがファッションセンスに秀でているのもまた事実である)。このような観察眼を含め、私の周りのマーケッターが日々仕事で使っている技を「発想」、「探索」、「報告」の3つのステップで紹介したい。

  身近な観察で見落としがちなのが、配偶者や恋人の存在だ。「パートナーが使うシャンプーのブランドは?」と質問を投げかけると、残念ながら答えに窮する男性が多い。「パートナーのシェービングクリームのブランドは?」の問いに女性が比較的明快に答えるのと対照的である。特に男性マーケッターは一番身近な顧客である配偶者や恋人の持ち物を観察し、その購入・使用心理について仮説を立てながら質問することを提案したい。マーケティングセンスはもちろん、パートナーとの仲が深まること請け合いである。パートナーの読む女性誌をチェックすると仮説の検証結果がN=1(自分のパートナーだけ)から一般的な女性心理に広がり、仮説の精度が高まる(Nはマーケティングリサーチで母集団数)。身近なパートナーの観察から「発想」を始めることをおすすめする。

  顧客の本音を「探索」したいときには、グループインタビューや、インターネット調査がある。しかし限られた予算内でいつも使えるとは限らない。代わって顧客心理に迫るツールがブログの活用だ。ある家庭用品メーカーでは売場に対する顧客の本音をブログ経由で収集した。結果、業界で毎年実施していたプロモーション企画が実は顧客受けが芳しくなく、チャンスロスにさえつながる可能性があることが判明した。同業他社に先駆けて顧客の本音に気づくことで、いち早く売場対応に手を打つことに成功した。この場合、従来型の調査で得られなかった視点がブログのコメントから得られたのである。また「政府統計」や「レポセン」(マーケティングデータポータルサイト。市場調査会社による自主調査結果を掲載。)も手早く活用できる市場データだ。お金よりも知恵を使う視点が欠かせない。

  上席や同僚、取引先の琴線に触れる「報告」があってこそ、このような「発想」や「探索」結果が活きる。皆が同じようなプレゼンをする中、無言のプレゼンで注目を集める方法がある。最初に紹介するのは、プレゼン内容をCM風にまとめて、動画で流す技である。写真と音楽から動画を自動生成するAnimotoというソフトを使うと簡単に制作できる。知人のポルトガル人は、コールドプレイの「VIVA LA VIDA」の音楽に合わせて、思い描くITビジネスのエッセンスを動画で流し、一言も発しないままにプレゼン後は拍手が鳴り止まなかった。続く無言プレゼンは、会議室の壁面一面をインタビュー調査や観察調査の写真・スライド、そしてプロトタイプのラフデザイン案で覆いつくしていた。その部屋を訪れると、文化祭の展示ブースのように、何も言わなくても参加者が注目して思わず質問をしてしまう仕掛けである。

  以上の「発想」、「探索」、「報告」の技を特に若手マーケッターの方に実際に活用して頂き、マーケティングスキル向上の一助になることを願って止まない。