CRMは過去の顧客情報を基に新規顧客を開拓するだけでなく、既存顧客を永続的に囲い込むことで初めて経営上のメリットを生む。例えば一人の顧客が自社の商品を買い続けた場合、一生涯にわたって支払ってくれる金額を考えてみるとよい。もし200万円の車を5回買い換えれば、合計金額は1,000万円。長い間自社を利用してくれるこの顧客の価値を考えれば、CRMをおろそかにはできないはずだ。しかし顧客を永続的に囲い込むためには企業理念・体質を根本から見直す必要がある。
1つの重要なポイントは顧客を大事にする発想法だ。私は従来の企業を「プレイボーイ型」と呼んでいる。商品を買わせたあとは知らんぷり。それでは企業と顧客はその場限りのつきあいで終わってしまう。
そこでCRMを成功させたい企業には「恋愛の達人型」になることをお勧めする。一度自社の商品を買ってくれた顧客についても「次に何をしたらこの人は喜んでくれるのか」を考え工夫すれば、その顧客はまた別の自社商品を購入してくれるだろう。
こうして恋人のように一対一の関係性を作れば、顧客と企業の関係は永続していくのだ。
もっとも、一対一の恋愛関係を作るには顧客の「満足」では不十分だ。例えば、ホテルのサービスについて感想を求めるアンケートに記入された「満足した」という答えは、概して「可もなく不可もなく」の意である。この顧客は次回もぜひこのホテルに泊まりたいという顧客ではない。
そこに必要なのは顧客を「感動」させることだ。別のホテルの例を紹介しよう。ある宿泊客がチェックインを済ませ、一度外出したあと部屋に戻るとチョコチップクッキーが一枚置いてあった。彼は、到着の際ポーターとのなにげない会話の中で自分の好物はチョコチップクッキーだと話していたのだ。彼は喜び、翌朝フロントにお礼を伝えた。すると翌日にはクッキーが2枚置いてあったという。以後彼はこの地では必ずこのホテルに泊まるようになった。
もちろん企業により感動の形はさまざまだろう。しかし、結局のところ、CRMとはマーケティングであり、マーケティングとは人の心をつかむサイエンスだということを忘れないでほしい。