電通報 2007.7.30

書評特集
夏に読む 夏に学ぶ

ブレインゲイト(株) 代表取締役  酒井 光雄


 
 なぜ、あの会社は儲かるのか?

 山田英夫・山根節著(日本経済新聞出版社)

 会計に関する書籍は、一般ビジネスマンにとっては無味乾燥で、最後まで読み終えることが少ない書籍ジャンルだ。その理由は、会計は会計の話、経営やマーケティングはそのジャンルのテーマだけに記述が留まり、両者の有機的な関係に誰も言及していなかったからだ。
 
 この問題を解決し、さらに会計と戦略を同時に理解しながら、企業事例を通じて実務に生かせるノウハウを学べるのが本書だ。「貸方」「借方」という言葉が一切登場せず、企業が収益を上げる構造が解説されていく。

 帝国ホテルよりも東横インの方が、伊勢丹よりもユニクロの方が、利益率が高い理由。スマイルカーブをビジネスモデルに組み込み、キヤノン・ジレットが高収益を上げている仕組み。多くの企業が実施しているポイント制度は、固定費比率の高い企業では得策だが低い企業では利益の持ち出しになっている事実。小さな企業が大企業を買収し、あるいは赤字企業が黒字企業を買収できる会計の仕組みまで解説する書だ。 

 
 ドラッカー 365の金言
 P・F・ドラッカー著 ジョゼフ・A・マチャレロ編 上田惇生訳(ダイヤモンド社)

 ドラッカーの処女作「経済人の終わり」はウィンストン・チャーチルが陸軍幹部候補生学校の卒業生に贈り、第二作「企業とは何か」はGMを精緻に調査して企業分析を行い、余りの的確さゆえにGMを不機嫌にした話は有名だ。

 本書はドラッカーの友人で大学の同僚であるジョゼフ・A・マチャレロ氏(クレアモント大学院大学教授)が、1万ページ以上にも及ぶ65年間の著作の中から、マネジメント・事業・グローバル経済・社会・イノベーションと企業家精神・意思決定・働く人たち・NPOとそのマネジメントについてその真髄をまとめている。

 1日1テーマに取り組むよう366の抜粋が紹介され、各テーマ別に読者が取るべきアクション・ポイントが示されている。その理由はドラッカーが講演やコンサルティングを終える際には「面白かったと終わりにせず、月曜の朝に何をどうするかを仰ってください」と結ぶことから着想を得ている。ファンはもとより、ドラッカー作品を未読の人にもお勧めの良書だ。


 右脳でわかる!会計力 トレーニング
 
田中靖浩著(日本経済新聞出版社)

 世の中には、決算書をつくる人のための書籍は山ほどあるが、 投資家や経営者、ビジネスパーソンなど「決算書を読みこなしたい人の書籍」はほとんど存在していなかった。しかし取引先の経営状況や、投資先企業の大局をつかみ、実態を手早く把握したいと考える人はとても多い。そこに登場したのが本書だ。実在する企業の決算書を図形にし、クイズ形式の展開なので活字嫌いや会計に疎い人にも抵抗感がなく手軽に読み進めることができる。

 貸借対照表(B/S)をストック計算書、損益計算書(P/L)はフロー計算書と位置づけ、企業の資金調達と運用、よいB/Sと悪いB/S、お金の流れ、そして財務体質をつかむ場所など、知りたいポイントを適確につかむことができる。

 登場する事例は、NHKと民法各社、楽天、花王、アサヒビールとキリンビール、キューピーなど業界の雄が登場し、読み手を飽きさせない。時間を掛けずに、経営の要点を素早くつかみたい人に最適の一冊だろう。

 

 なぜ日本にはいい男がいないのか21の理由
 
森川友義著(ディスカヴァー携書)

 著者は早稲田大学国際教養学部の政治学教授で、政治脳(マキャベリ的知能)と恋愛とは関係性があるとする視点から、時代に起因する理由、男性に起因する理由、そして女性に起因する理由のそれぞれ7つ、合計21の理由から、日本にいい男がいない訳を説き明かしてくれる。

 一目ぼれ率が高い男性と反対に低い女性の特性から、男性が安易に女性に好きだと告白する愚に言及し、また長寿により人間は長く一緒にいると必ず相手に飽きてしまう実態に触れて行く。一方女性の側からは、自分自身の商品価値を正確に把握できず高望みしてしまい、また高学歴化によって男性が馬鹿に見えてしまう実態にまで触れる。

 加えて進化生物学上からは、男性も女性も右手の人差し指と薬指を見れば、その遺伝学的特徴が容易に見て取れるという興味深い事実まで登場する。読み手が角度を変えれば、いい男といい女になるヒントを得ることにつながり、また息子や娘を持つ親の立場からも示唆に富んだ内容だ。